(割と楽しみにしている)病院へ行く日であった。

お腹に注射をしたりするのだけど、割と楽しみにしているとは変な自分だ。


まず、モノレールが気に入ってる。
下界の車たちを見下ろして、綺麗な或いは面白い広告が描かれた小振りな空いた車両に乗り込む。
(値段が高いのと、駐輪代がいるのが難点ではある)
万博公園で乗り換え。
今日は一本乗り遅れてしまい、ここで20分以上待たねばならない。
でも、この駅はいい。
ホームから上がれば、テーブルや椅子があり、ゆったりできる。
今日は、20分の間に遠足の子供らが5校ほど来た。
どこも1年生くらいで、わいわい賑やか。
先生が皆を先導して行く。
ちょっかいを掛ける子。
前が進んでるのに気づかず、後ろの子に言われて慌てて追いかける子。


ある学校は、えらい静かにビシッと整列してる。
皆お揃いの長袖長ズボンの体操服、同じリュックなのをみると私立か。
若い女の先生が、「小さく前に倣え!」。
ちょっとぼんやりの子に、すかさず渇を入れる。
音無しそうな子ばかりで、私立の先生はやりやすい?


その間ずっと、同じ病院行きの線を待つおじいさんに話し掛けられる。
小樽で船の積荷の仕事をしてたらしい。
にこやかに話を聞いてたけど、もう一人おじいさんが来てそちらと話始めたのでちょっとほっとする。


この線は、太陽の塔をぐるりと回って緑の中を走る。
今日はぽかぽか暑い位の日差しで、小春日和という感じ(まだ早い)。
O大の学生や先生らしき人物も乗っていて、難しそうな書物を読んでいる。


駅から病院までは屋根が付いていて、徒歩1〜2分。
国立入試の日は面白かった。
予備校とか、塾とか、サークル?とかの宣伝の人がずら〜っと花道を作って、口々に激励の言葉を発する。
予備校が合格鉛筆を配っていた。


診察券を出し、番号が反転するまで待つ。
予約なので大抵それほど待たなくていい。
今日は初診の人が入ったらしく、待たされた。
隣にいた人と話して待つ。
同じ駅の人だったし、前には近所に住んでいたらしい。
去年手術したそうなので、私の方が1年先輩である。
T先生は、よく分かるように話してくれるし、にこにこ顔見てると安心と意見が一致。
旦那が時を同じくしてM病院に入院していたもよう。


さて、反転。
T先生がいつものように、安心できる笑顔で話しかける。
今日は時間が詰んでるので、ちょっと急いでおられる。
お腹に注射。
これはホルモン療法の一環。
脂肪の少ない人は痛いらしいが、私は全ぜ〜ん痛くないし、T先生だから我慢できる。
来月は血液検査があるので、ちょっとやだけど。
処置室を通ると、あの辛かった化学療法を思い出す。
でも、そのお陰で10年生存率が10%上がったんだから。
(少し前、そんなドラマあったね。85パーセントだっけ?私よりいいよな。)


会計はすぐ回ってくる。
でも、その間に売店へ行く。
おいしいパンや、本などがあるので一応見て回る。
食堂の今日の献立や、ケーキセット、和菓子セットもチェック。
もう飽きちゃったけど、何か食べて帰る。
14階には展望レストランがある。
入院中、よく14階まで階段を登って運動した。
入院中の方がよく運動したなぁ。
毎朝、日差しが強くなる前に中庭へ行き、パンの残りをスズメにやった。
スズメがどんどん来て、遠くでカラスが様子を伺い、猫がスズメを狙っていた。
スズメの食べ残しはアリが運ぶ。
アリは時々運んでるパンをスズメに取られ、右往左往していた。


同室のおばちゃんが、着替えて散歩に行き、蓮池があると言う。
翌朝、別室のお姉さんと待ち合わせて行く事にした。
5時半待ち合わせ。
(早起き、健康的な生活。
9時消灯だから、4〜5時頃目が覚める。)
中庭を抜け、大学の図書館や、生協を過ぎ、坂道を登る。
誰もいなくて少々気味が悪い。
お姉さんは、子供の頃幽体離脱した話や、引っ越してきた今の家にいる霊の話をするのでますます効果満点。
大きな池を通り、遂に蓮池が。
写真を撮り(心霊写真にならぬ事を祈って)、岐路に着く。
まぁ、何て元気な入院患者なんだ、私たちは!


同室のメンバーは初めは、高校生の子と、60歳位の人と、面白いおばちゃん失礼50代の人の計4人。
高校生の子は、見かけに寄らずお嬢様だった。
家は5階建てで、犬を3頭部屋で飼ってるし、某超お嬢様校に通ってた。
卒業したら、一人に一台車を持つのでパンフを見ていた。
面白い50代の人は、アンテナが高く、同じ病棟の入院患者の事をすべて把握していた。
お陰で私もよく分かって、皆と親しく話す事ができた。
本当に面白い人で、向かいの形成外科の男性たちの話まで聞いてきて逐一教えてくれた。
部屋割りは、婦長さんがアンケートを元に決めるらしい。
年配の人は、トイレの近く、重い人は看護士詰め所の近く。
私らは、詰め所から一番遠い奥の部屋だったから、元気ってことだろう。
霊感の強い彼女は、宗教の信者の人ばかりで一室だったようだ。


高校生の子のTVがビデオ付で演劇部だったので、私は家からキャラメルのビデオを持ってきてもらった。
戸を閉めて、4人でビデオ鑑賞会。
風光る」読んでやったので「風を継ぐ者」も見た。
その子が退院し、50代位の人が入ってきた。
いつも英語を勉強している。
ある日、分かった。
娘さんが、金髪の恋人を連れてきた。
結婚するらしい。
この人と、面白い人がなぜかいつも同じ番組を見てる。
イヤホンしてるけど、TVに返事しながら見てるので、それを聞くのが面白くて、私と60歳の人は自分のTVを見ない。
それぞれ、ふたりの解説を聞きながら、ふたりのTVを見る。
4人でわいわい楽しかった〜。
部屋の皆でラジオ体操や、リハビリ体操もした。


ある日、万博公園で野外コンサートが開かれた。
聞くと、すごいメンバー。
山崎まさよし平井賢矢沢永吉・・・・。
歌ってる人は声しか聞こえないが、観衆が蠢いてるのが見える!
山崎まさよしのファンの友人にメールすると、なかなかチケットが取れない人気イベントなのだそうだ。
その後、キンキキッズのコンサートもあったのだが、退院翌日だった><
(櫓を組み直していた。)


次女がコンクールを受ける日、外出許可を貰って行った。
リンパ液を受ける管を挿した状態で・・・。
(液を溜める容器はポシェットになって掛けれるようになっている。)
一人で病院に帰っていくのは寂しかった。
長女は、中3で受験勉強真っ最中のはずだった。
期末テストも一人で乗り切った。
皆が夏期講座や、塾やと言う時、自分でお弁当入れて、家族の食事も作ってくれていた。
父がいろいろ面倒を見てくれて助かった。
長女はその頃いじめを受けていて、毎日電話をして来た。
入院する時すごく心配だった。
でも、乗り切ってくれた。
その後2学期、3学期とぐんぐん成績を上げ、志望校もだんだん高い所を勧められた。


入院中、枕元に上川さんの写真を留めていた。
若い看護師さんは「誰?」
30代の看護師さんは「ああ、お水の花道の石崎さん?」
年配の看護師さんは「上川さんやん、ファンなん?」。
お見舞いに見てくれたママ友。
「私、この人、世に出る前知ってるえ。」
近鉄劇場で、サラリーマンみたいな役してはって、竜馬が出てくる・・・」
「歌とたり、踊ったりして、シンデレラなんとか言う・・・」
何と彼女は「また会おうと竜馬は言った(初演!)」と「シンデレラ迷宮」を見ていたのだ〜!
実際にですよ、舞台を。
私が上川さんのファンと知らなかったので、今まで言わなかったらしい。


また最後はかみかみ・・・となった所で。
入院中の事を書くときりがない。
今日は帰ったらすぐ生徒に渡す「黒い瞳」を録音しなきゃと思い、どう弾こうかと思い描きながら帰路に付く。
自転車置き場で何か聞こえてくる・・・・
うっそ〜これ、「黒い瞳」じゃん。
こんな偶然ってあるのねぇ。