9月のまだまだ暑い日、パインが逝った。

パインは1999年4月、我が家で生まれた。
そして、おととい、その母フェルが逝ってしまった


   


1998年12月。
こちらに引越して初めてのクリスマス。
動物が飼いたいという子供らのために、ペットの卸屋さんを見つけた。
ウサギやチンチラを飼いたがっていたのだが、そこにいたモルモットに目が留まった。
小さくて大人しくて、鳴き声が可愛い。
何度か見に行き、黒・こげ茶・茶・白のぶちの番いに決めた。
おそらく、生まれて半年までだったろう。
ポプリとフェルと長女が名づけた。
初めはポプリを♀、フェルを♂と間違えていた。
二匹を同じケージで育てるうち、ポプリは全体的に大きくなってきたのに、フェルは体系がしゃもじの様になってきた。
その膨れたお腹を見るとはっきり子供がいるのが分かった。
♂と♀が逆だった・・・。
うごめいているお腹の子は触った感じでは3匹か?
4月のある日、私はモルモットの赤ちゃんが生まれた夢を見ていた。
起きたら本当に生まれていて、小ちゃいのが3匹でキュウキュウ鳴いていた。
ポプリは小屋から追い出されて、隅っこに縮まっていた。
よく本などに、赤ちゃんを触ったらもう育てなくなるとか、覗かずそっとしておくようにとか書いてある。
しかし、フェルはいつも通り、餌くれくれの催促に「ンンー、ンンー」言いながら走り出てくる。
その後をチビたちが大慌てで追いかけ、フェルが止まるとすかさずそのお腹に潜り込み、お乳を吸う。
相変わらずフェルに邪険にされているポプリ、また妊娠してはいけないのでもう一つケージを購入。


真っ白で両耳が薄茶のハンサム君がパイン。
母フェルによく似てるが、模様が左右反対の僕ちゃんチップ。
白地に黒い模様、お尻の穴の所だけ焦げ茶の可愛い子ちゃんレモ。
暖かい春の日によく堤防に連れて行った。
ポプリはいつもちびっ子ギャング3匹の踏み台にされ、フェルには追っ払われていた。
とても大人しくていい子のポプリであったが、これ以上増えては困るし、5匹はやっぱり大変なので、チップと共にペットショップに引き取ってもらう。
それからは、フェル・レモ母娘とパインの2段生活となった。


もる語の数々。
「ンンー?ンンー?」(えさ?いいもん?)→飼い主がそばに行った時
「クィーン!クィーン!」(早くちょうだい!)→餌の催促
「グルグルグルグル・・・・」(なんだなんだ?うれしい)→ケージ掃除後戻した時など
同じく、腰を震わせながら「グルグル・・・」(感じちゃう)?→♂と♀が会うとしてたので求婚かな。
「キュン、キュン、キュン」(いややっちゅうに)→レモがいつもフェルに言ってた
「キュイ〜ン、キュイ〜ン」(やめてよ、やめてよ)→注射される時など
「カッカッカッカッ(歯の音)」(あやしい、注意しろ)→捕まえられそうになった時など
「クルクル・・・(喉がなってる?)」(おいしい〜)→餌に食いつく時
「クハッ」→くしゃみ


レモとフェルはいつも居場所の取り合いをしてるのか、いい所を陣取ってるレモを後ろや横からフェルが押し、レモがよく「キュン、キュン」言っていた。
レモが夜中に激しく「キュイーン、キュイーン」と鳴き、見に行ったことも。
毎日の餌の奪い合いは凄まじかった。
親でも子でもない!って風。
餌を奪ったら、首を振って相手を牽制し、向こうの方へダッシュ
生野菜はいくらでも食べる。
ラビットフードはお腹空いてないと見向きもしない。


レモは肺炎になったことがある。
鼻がつまり、息を苦しがり、餌も食べなくなった。
獣医さんに、栄養剤を打って貰い、ヨーグルトと共に抗生物質・流動食をシリンダーで取らせた。
ガリガリに痩せてしまい、とにかく食べさせようと、ライバルのフェルが目の前でおいしそうにキャベツを食べるところを見せた。
すると、反対の端をカジカジ・・・。
ようやく回復の兆しが見えた頃、全身の毛が抜け、スキニーモルになってしまった。
でも、治療やライバル大作戦のお陰でレモはすっかり元気になり、毛も元通りになった。
以前より一回り大きくなりさえした。


パインは腫瘍ができ、獣医さんも手術は難しいという事で、インターフェロンなどを処方された。
弾けて来て痛そうだった。
洗ったり消毒したりしていたが、昨年9月のある日、とうとう尽きてしまった。
父親に似て臆病で大人しく、いい子だった。
パインは遊びに連れてってやろうと思っていた堤防に埋めた。
獣医さんは、「よく持ちましたね」と言ってくれた。


フェルは病気もせず、活発でケージから出るとそこいらを散策して回った。
飼い主が覗くとジッと顔を見上げるのが何とも愛らしい。
身軽で、餌欲しさに後ろ足で立つ事ができた。(普通、モルモットは立てない)
段差も降りれるし、ケージには自分で飛び上がって入った。
好き嫌いなく何でも食べ、2匹と違って病気もせず、小粒で丈夫だと安心していた。
小柄なフェルには、ここの所の寒さが堪えたのか・・・・。
本当に寒かった。
餌を猛烈に欲しがっていた。
毎年、ケージをダンボールで囲み、新聞紙をたくさん入れてやることで冬を越していた。
そう言えば、前日、いつも通りこどもが掃除した時、いやに静かだったようだ。
呼ばないので、あまり気にせず、覗いていなかった。
その日も、私たちは冬休み最後の日を名残惜しく楽しんでいた。
夜、次女が餌をやりに覗いた。
あまりに突然だった。
昨日、パインを埋めた所にフェルを埋めに行った。
まだ生きてるみたいにフカフカした小さな身体・・・・。
今年8歳。
モルモットにとっては寿命なんだろう。
パインが逝って、こんなにすぐ続いてフェルが逝ってしまうなんて思いもよらなかった。


野菜くずが出たとき、思わずフェルレモに・・・と思った。
“フェルレモ”とよくまとめて呼んでいた。
初めてレモだけに食べさせる。
取り合う相手がいず、拍子抜けしてるかな?
レモは、抱っこしてケージに戻した時、いつもならフェルにくっ付いて安心するのだが、小屋を覗いて探してるようだった。
レモちゃん、皆の分も長生きしてね。